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2007年5月 4日 (金)

混浴エピソード 東郷・谷水旅館 2

*** 前回より続く ***

女性は2mほど離れた斜向かいの位置に浸かった。満月に照らされて外灯がなくても互いの顔がはっきり見える。
「旅行で来はったんですか。」
「いえ。残念ながら、仕事ですよ。」
「おひとりで?」
「そうです。」
「お仕事で、ひとりで温泉に泊まるって珍しいですね。」
「そうかもしれませんね。」
「・・・もしかして小説家とか?」
「そんなに知的に見えます?」
「そうでもないか・・・。」
「・・・フォローになってないですよ。」

結構人なつこいというか、屈託なく話しかけてくる。まったりタイムどころではない。こうなれば女性と混浴という状況を最大限楽しもう。男は、少し悪戯することにした。

「最近、温泉はどこか行った?」
「有馬温泉はよく行くけど。陶泉御所坊とか。」
「おお、いい宿にお泊まりですね。有馬はお湯もいいし。」
「でも、ここみたいな鄙びた宿も気兼ねがなくて好き。・・・お気に入りの温泉ってあります?」
「うーん。いくつかあるけど。純粋に一番感動したのは平内海中温泉かな?」
「それ、どこ?」
「屋久島。波打ち際の岩の間から硫黄泉が湧いていて、潮が引くと湯船ができるという・・・」
「それ、テレビで見たことある。すっごく良さそうですよね。」
「最高だよ。目の前は太平洋。回りは何もない大自然。大きな波が寄せてきて岩礁にぶつかりながらだんだん小さくなって最後にちょろっと湯船に入ってくる。一定のリズムで繰り返すんだ。」
「行ってみたーい。」
「そこは、自然のままだから、湯船も混浴。脱衣場もなくて、男も女もみんな岩の陰で適当に脱いで入るんだ。」
「えーメチャ恥ずかしいやん。」
「それが不思議なほど恥ずかしくないんだ。俺が行ったときも男女が5~6人はいたけどみんなタオル1枚で入ってたよ。たぶん、自然に囲まれたあの雰囲気がそうするんだと思う。それと、みんな裸だったら恥ずかしくないんだ。」
「なんか信じられへん。」
「ホントだよ。その時、パジェロに乗った男女4人グループが来て、水着のまま入ってきたんだ。水着での入浴は禁止なんだけどね。その時、自分が裸の時に、裸でない奴がいたら恥ずかしくなるってわかったんだ。みんなもそうみたいで、特に女の子はみんな上がってしまったんだ。」
「それってあるかも。」
「今だって恥ずかしくないと言ったら嘘になるかな。」

男はさらっと言っていたずらっぽい視線を送った。女性は見つめ返してにこっと微笑んだ。

「・・・そう来たか。そのために平内海中温泉の話したんや。」
「成り行きだよ。あなたの質問に答えただけ。」

女性は立ち上がって湯船の縁に腰掛けた。浴衣を着ているとはいえ、濡れていては体のラインは隠さない。男は視線を横にそらし、やがて星空を見上げた。湯船から出た女性から視線をそらすのは混浴マナーの基本である。

「この前、湯原温泉の八景ってホテルに泊まったんや。目の前に有名な河原の露天風呂があった。」女性が話し始めた。
「西の横綱って呼ばれている砂湯だね。」男は視線をはずしたまま相槌を入れる。
「そう。夜遅く、若い女の子が2人、フェイスタオルだけで入ってた。他に誰もいなかったし。」
「あそこは八景から丸見えでしょ?勇気あるなあ。」
「そうとも思ったけど、気持ちよさそうだった。あなたは男性やからわからへんと思うけど、バスタオル巻いてると、メチャ重い、ずれる、張り付くで、決して気持ちようはないんやで。」
「へえ、そんなもんか。でも、わかるような気がする。」
「そん時もうちはよう入らへんかった。でもホントはなんもなしで入るんが一番気持ちええんや。」

女性はそう言うと立ち上がって湯船の中を歩き出した。男は星空を見上げたままだが、その気配は感じていた。

「・・・脱いじゃおうかな。」ぽつりと女性が呟いた。

*** 次回に続く ***

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【お詫び】

先月中旬、義母が倒れて妻は実家へ。普段、靴下の収納場所も知らない亭主はパニック状態で、ついついブログの更新間隔が開いてしまいました。

メールで様子伺い頂きました皆様、ありがとうございました。

普段ご来訪いただいている皆様、ご心配をかけ申し訳ございませんでした。

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