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2006年11月19日 (日)

竹原忠海・岩乃屋

【2006年11月】

瀬戸内海沿岸には、古来から伝わる石風呂(岩風呂)が点在している。しかし、時代の変遷か、広島市南区の丹那の石風呂をはじめ、徐々にその姿を消しつつある。竹原で今も石風呂を営む岩乃屋を訪れた。

Ca330043 竹原から国道185号線を三原方向に進むこと15分、忠海高校を過ぎ、跨線橋を越えてバス停の手前、最初に右に入る道を右折(といっても、引き返すような形で超鋭角!)車1台がいっぱいの道路を海まで出ると海水浴場、床浦神社があり、隣接して岩乃屋がある。玄関を入り、おばちゃんに1200円を払う。

「ここは、蒸し風呂。男女一緒だから水着着用してね。」水着は貸し出しもあるらしいが、持って行った方がよい。

Ca330041風呂はこの建物を出て100m先の海岸。貴重品は持って行かない方がいいよ。」

ここ忠海の海岸は、島々が折り重なる、瀬戸内海でも最も美しい場所のひとつ。その海を借景に岩場に張り付いたような小屋が石風呂。小屋といっても部屋は崖をくりぬいた洞穴で、それを覆うための建物である。

中に入る。男女別の脱衣場で水着に着替え、衣類を篭に入れて休憩所の棚に置く。休憩所自体がすでに暖かく、一見ここが風呂かと思った。床には筵(むしろ)が敷き詰められていて、入口にあるドングロス(麻袋)を持って入り、床に敷いてそのCa330036上で寝そべる。何とも素朴。隣の部屋(穴)には、火鉢があり、横には、海水を沸かした塩湯の浴槽と、かけ湯用の真水の湯船がある。そして奥には石風呂の入口が。

石風呂は熱い方とややぬるい方の2つ。談笑していたおじさんが「よし、入るか」と言うと4~5人が一斉に熱い方に入る。私も連れて入った。中は裸電球ひとつの明かり。自然の岩と煉瓦積の壁、天井が煤で真っ黒。水を入れたドラム缶がある。保温剤代わりらしい。体感温度は100℃のサウナよりも熱いくらいだが、聞くと80℃くらいとのこと。湿度が高い分熱く感じるのか。座っていたら相当熱いのでみんな床に寝そべる。ひとりでは熱くて入れないのでみんなで入るのだと聞き、納得。

Ca330037床にはふかふかするくらい大量のモバ(アマモ)が敷き詰められていて、磯の香りが立ちこめている。サウナに似て否なる不思議な空間。

石風呂は、サウナとは加熱方法が全く違う。朝、石室の中で薪を燃やして岩盤自体に蓄熱する。その後は炭やおきを掻き出して筵、モバを敷く。これを毎日繰り返すのだから大変な作業。岩盤の蓄熱能力は相当のもので、本当は3日間くらい火を焚かなくても十分熱いらしい。

ややぬるい方へ入る。こちらは、熱い方から壁の穴を通じて熱が回る仕組み。こちらは、20℃くらいは低い感じで、座ることもできる。温度差からか、空気中の水蒸気が霧になり、裸電球に照らされて幻想的。一緒に入っていたおばちゃんは「こっちはぜんそくにもいいんよ。」確かに熱い方よりは呼吸も楽で、磯の香りに炭の香り?が混ざっているのか、漢方系のアロマにも感じられる。

出てみると、火鉢で串を焼きながら酒を飲んでいるおにいさん、みかんを食べているおばちゃん達が火鉢端会議。

「おにいさん、みかん食べんさい^^」とおばちゃん。

「どこから来たん?」

「東広島です。皆さん地元の方ですか?」

「いや、いろんな所から来てよ。広島やら三原やら。石風呂は昔はあちこちにあったが、今は減ってしもうたけね。」

「ここへ入るとその日は疲れるんよ。じゃが、次の日から違うんよ。」

老若男女関係なく和やかに歓談する風景。石風呂だけでなく、この雰囲気も日本古来からのスタイルではなかろうか。

風呂から上がっても汗が引かない。ひとしきり話をしながら汗が引くのを待って、上がり湯をかけて着替えた。帰り際に、旅館に立ち寄る。

「ありがとうございました。ここはいつから営業されているんですか?」

「うちは昭和25年から。でも、忠海ではずっと昔からあったんよ。四国にも桜井海岸で石風呂されているし、弘法大師との関係もあるとかないとか。」

温泉資源のない瀬戸内海沿岸で暮らす人達が、漁で疲れた体を癒す生活の知恵なのか。昔は、石風呂は、海草の採れる夏場だけだったらしい。それを岩乃屋さんは乾燥させた藻で年中営業できるようにされたそうだ。

日本古来の入浴法、蒸し風呂。ご興味ある方は、一度はどうぞ。

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